知的財産に関わる権利・法律の概要 ~知的財産は企業の重要課題です~

ビジネス情報~社会人編~
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知的財産に関わる権利・法律概要

業種や業界を問わず、「知的財産」を有効に活用することは企業成長の重要課題です。

ここでは、知的財産に関わる権利・法律に関して説明します。

そもそも【知的財産】とは

  〇本が書かれた内容、ゲームのソフトなどの「著作物」
  〇著名なブランドなどの「商標」
  〇車のデザインなどの「意匠」
  〇新しい技術やアイディアなどの「発明」

 などのことを言います。

財産権について

国民の財産権は、まず「憲法」で保障されていますが、憲法は「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」としています。(憲法第29条2項)

これを受け、下記の個別の法律によって知的財産権はその内容等が規定されています。
【知的財産権の全体像】 ※権利と関連する法律
 〇知的財産権
  ◆著作権(著作権法)
  ◆産業財産権(工業所有権)
   ・特許権(特許法)
   ・実用新案権(実用新案法)
   ・意匠権(意匠法)
   ・商標権(商標法)
  ◆育成者権(種苗法)
  ◆営業秘密に関する権利等(不正競争防止法) 
知的財産には、特許権の対象となる「発明」をはじめとして、製品デザイン(意匠)、商品名(商標)や美術品(著作物)などといった様々な種類があり、それぞれの法律により権利内容等が規定されていますので、相互の関係を理解することが大切となります。

知的財産法の概要

「知的財産法」とは著作権法や特許法といった知的財産権について定めた法律の総称、「産業財産権法」は特許法・実用新案法・意匠法・商標法という4つの法律の総称であり、具体的に制定されている法律名ではありません

〇著作権法
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。

著作権法は、著作物の要件・著作者人格権及び著作権・出版権・著作隣接権、権利侵害に対する措置等について規定されています。

 
〇特許法
この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。

特許法は、発明の定義・特許権取得手続・特許権の内容・権利侵害に対する措置等について規定されています。

 
〇実用新案法
この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。

実用新案法は、考案の定義・実用新案権取得手続・実用新案権の内容・権利侵害に対応する措置等について規定されています。

 
〇意匠法
この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。

意匠法は、意匠の定義・意匠権取得手続・意匠権の内容・権利侵害に対する措置等について規定されています。

 
〇商標法
この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。

商標法は、商標の定義・商標権取得手続・商標権の内容・権利侵害に対する措置等について規定されています。

 
〇種苗法
この法律は、新品種の保護のための品種登録に関する制度、指定種苗の表示に関する規制等について定めることにより、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、もって農林水産業の発展に寄与することを目的とする。

種苗法は、品種や種苗の定義・育成者権取得手続・育成者権の内容・権利侵害に対する措置等について規定されています。

 
〇不正競争防止法
この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

不正競争防止法は、不正競争行為や営業秘密の定義・権利侵害に対する措置等について規定されています。

 
各法律の管轄官庁
 〇著作権法 ・・・文化庁
 〇産業財産権・・・法特許庁
  (特許法・実用新案法・意匠法・商標法)
 
 

他の法律との関係性

また、法律は単独では運用できないため、知的財産管理に密接に関係している下記のような法律があります。

【知的財産管理に密接に関係している法律】
 ◆民法(契約や財産権に関する一般法)
 ◆独占禁止法
 ◆弁理士法
 ◆関税法
知的財産法は「特別法」となり、特別法が「一般法」に優先して適用されますが、特別法に規定されていない、例えば「知的財産に関する契約場面」では「民法」が適用されます。

したがって、関係法令を理解することも重要となります。

「一般法とは」
適用対象を限定せず、誰にでも適用される法律
「特別法とは」
特定の対象のみに適用される法律

その他の法律・条約との関係

〇独占禁止法
この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。

知的財産権は、正当な権利行使である限り、独占禁止法に違反することはありません。

しかし、知的財産を他人に利用させるにあたり、著しく不利な条件を押しつけるなど「権利濫用」と認められる場合には、独占禁止法に違反するおそれがあります。

〇弁理士法
弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。

特許庁に対する諸手続については、弁理士など代理人によって行うこともできます。

弁理士法は、弁理士の資格・弁理士でなければ報酬を得て業としてすることができない事項を規定されています。

〇関税法
この法律は、関税の確定、納付、徴収及び還付並びに貨物の輸出及び輸入についての税関手続の適正な処理を図るため必要な事項を定めるものとする。

知的財産権を侵害する物品は、輸入又は輸出してはならない貨物に該当します。

関税法は、この輸出又は輸入してはならない貨物を規定するとともに、侵害物の認定手続、没収・廃棄といった税関長の措置について規定されています。

知的財産をはじめとする法律は、原則として日本国内でのみ適用されるため、その効力も外国には及びません。
(外国の法律の効力も、原則として日本には及びません)

しかし、現在では国境を越えて知的財産(権)を保護することが求められており、また、その保護内容も可能な限り各国共通とすることが望ましいとされています。

そこで下記のような条約が締結されています。

〇パリ条約
正式には「工業所有権の保護に関するパリ条約」といい、1899年に加盟しました。

工業所有権の保護は,特許,実用新案,意匠,商標,サービス・マーク,商号,原産地表示又は原産地名称及び不正競争の防止に関するものとする。」

条約の特徴として①内国民待遇②優先権制度③各国特許の独立という3原則が挙げられています。

〇PCT(特許協力条約)
特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願とは、ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度です。
〇ベルヌ条約
この条約が適用される国は、文学的及び美術的著作物に関する著作者の権利の保護のための同盟を形成する。

19世紀に成立し、現在も効力を持つ著作権に関する有名な条約で、日本も1899年に加盟しました。

条約の特徴として、「無方式主義・著作者人格権の保護・内国民待遇・最低保護期間の相互主義」等を定めています。

条約に加盟することによって、条約内容に従って加盟各国は法律を整備することになります。

法律に規定がなく、また条約と法律が矛盾する事項については、「条約」が優先することとなります。

 

知的財産は様々な法律等と関係性あり

著作権法や特許法などの「知的財産法」、特許法・実用新案法・意匠法・商標法の「産業財産権法」は様々な法律・条約と密接な関係があり、相互の関係を理解することが大切です。

また、知的財産は情報や経済のグローバル化とともに、国境を越えて知的財産(権)を保護することが重要課題となっております。

ビジネスをする上で、知財マネジメントに関するスキルを身につけることは必要不可欠となっており、ビジネスモデルの創出に関わるすべてのビジネスパーソンにとってますます重要なスキルとなってきています。

企業内での知的財産の管理においては、「弁理士」、「知的財産管理技能士」、「ビジネス著作権検定」、「知的財産翻訳検定」「知的財産アナリスト」など、社内での育成はもちろんのこと、社外のスペシャリストを活用することも検討してみてもよいかもしれませんね。

 

 

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